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九谷焼がもっと好きになる やきもの用語集

やきものの世界には、一見すると難解に思える専門用語が数多くあります。しかしその一つひとつには、美を追い求めた工夫や、焼成の偶然性を楽しむ精神が込められています。ここでは、主に九谷焼や日本陶磁史と関係する言葉をいくつか紹介します。
絵付けや装飾の技法
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青粒(あおちぶ)
大正時代(1912〜1926)に九谷焼で流行した加飾法。青い小粒の盛絵具をびっしりと施し、ざらりとした質感と均整の美しさを出すのが特徴。 -
赤絵(あかえ)
赤を基調に緑・黄・藍などを組み合わせて描く上絵付け。中国で始まり、日本では肥前の柿右衛門が正保年間(1644〜1648)に最初とされるが諸説ある。華やかで雅やかな印象を与える技法。 -
色絵(いろえ)
本焼きした素地の上に、柔らかい発色の絵具を乗せ、もう一度低温で焼き付ける方法。赤絵もこの一種に含まれる。色彩の豊かさと繊細な筆致が魅力。 -
雲錦手(うんきんで)
「花は雲、紅葉は錦」をテーマにした絵付けで、桜と紅葉があしらわれた華やかな意匠のこと。 -
雲彩(うんさい)
五色の釉薬をにじませたり、ぼかしたりして雲のように見せる技法。幻想的で柔らかい景色を生み出す。 -
後絵付(あとえつけ)
本窯で焼成した後、別の窯で絵を加えること。完成品に価値を高めるため、後年に加飾されたものも「後絵付」と呼ばれる。
形や釉薬の特徴
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朝顔手(あさがおで)
青磁でよく見られる器形。口縁が朝顔の花のように外側へ反りひらくのが特徴。 -
後釉(あとぐすり)
古い素地にあとから釉薬をかけたもの。時代を経たやきものが改めて「よみがえる」一例。 -
暗花(あんか)
下絵を素地に彫り込み、その上に釉をかける技法。触れても凹凸を感じず、ぼんやりと文様が浮かび上がるのが趣深い。 -
追覆(ついぷく)
高台の内部にまで釉薬を施したもの。対照的に、高台に釉薬をかけず土肌を見せるものは「土見」と呼ばれる。 -
色替り(いろがわり)
窯変によって、釉薬の色が本来の発色と異なるもの。偶然による変化を「火変わり」として珍重する。 -
カセ
焼成中に釉のつやが十分に出ず、不透明で漆のような質感になったもの。しっとりと落ち着いた景色を生み出すこともある。
素地や表面の景色
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石はぜ(いしはぜ)
胎土に混じった小石が焼成時に表面へ噴き出し、粗い景色をつくるもの。自然の偶然がかえって面白みや力強さを与えるとして喜ばれる。 -
釜印(かまじるし)
窯で焼いたやきものにつける標識。共同窯で誰の作品か、どの注文かを区別するための目印でもある。
やきものの専門用語は一見取っつきにくくても、その背景には「美しさを探るための工夫」や「偶然を受け入れる遊び心」があります。九谷焼や古陶磁を眺める際に、こうした言葉を知っていると、器の持つ景色や時代背景がよりいっそう深く感じられるようになります。