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時を超えて愛されるアンティーク家具の魅力

時を超えて愛されるアンティーク家具の魅力

―竜宮オークションで人気の品々から見る暮らしの美意識―

かつて日常の道具として使われていた家具が、今ではひとつの“作品”として再び注目を集めています。家具に込められた職人の技、木材の風合い、そして時を経た美しさ。それらを愛でる人々が増え、アンティーク家具は再び生活空間に息を吹き込みはじめています。竜宮オークションでも人気を集めるアンティーク家具の中から、特に注目度の高いものを紹介します。

丸椅子 ― 素朴ながらも職人技が光る逸品

まず紹介したいのは、丸椅子です。一見シンプルな形ながら、その佇まいには不思議な温もりがあります。昭和時代につくられた堅木の丸椅子は、木肌が硬くしっとりとした質感で、光沢の奥に職人の息遣いが感じられます。使い込まれたことで生まれる褐色のヤケ具合が実に味わい深く、長年にわたり使われてきた歴史を物語ります。

座面や脚部にはホゾ加工と呼ばれる伝統的な接合技法が用いられ、金具を使わずに木材同士を組み合わせて強度を出しています。この“見えない部分へのこだわり”こそ、古い家具の価値を支える大きな要素です。現代の工業製品にはないしっかりとした重みと安定感、そして1脚ごとに異なる木目や色調の個性が、丸椅子の魅力をいっそう引き立てます。ナチュラルなインテリアにも、古民家風の空間にも調和する普遍的な美しさが、多くの愛好家を惹きつけてやみません。

ケビント ― 医療棚からディスプレイへ

続いて人気を集めているのが、“ケビント”と呼ばれるアンティークのキャビネットです。ドイツ語で「キャビネット」を意味するこの家具は、もともとは医療用の収納棚として使われていたもの。薬瓶や医療器具を整理するためにつくられたケビントは、無駄のない構造とガラスの透明感が特徴です。

その清潔感ある佇まいと、光を柔らかく取り込むデザインが、現代のインテリアでも新たな魅力を放っています。とくに人気なのが全面ガラス張りのタイプや、脚が直線ではなくろくろ細工のような曲線を描くタイプ。これらは当時の職人が一点ずつ丁寧に仕上げた手仕事の成果で、現代の量産家具では味わえない独特の雰囲気を醸し出します。

かつて医療用だったケビントは、今ではコレクション棚や書棚、食器収納など、さまざまな用途に生まれ変わっています。白い壁やコンクリートの空間にもよく映え、無機質なインテリアに温もりを添える存在として人気を博しています。

ガラスケース

そして竜宮オークションで毎回高い人気を誇るのが、ガラスケースです。ガラスケースは今も昔も展示・収納のための家具として使われていますが、アンティークの魅力はその素材と佇まいにあります。

昔のガラスケースは、ほとんどが木製の枠組みでつくられています。とくに大正から昭和初期にかけての日本製は、レトロな黄色味を帯びた木の色合いが特徴で、古い商店や駄菓子屋、薬屋などでよく見かけたものです。長年の使用で生まれた細やかなキズや擦れが、かえって温かみを感じさせ、置くだけで空間に深みをもたらします。

また、当時の高級店や呉服屋で使われていたガラスケースには、ケヤキやナラといった良質な広葉樹が使われ、引き出しの細工や脚部に凝った装飾が施されています。そのつくりの丁寧さと素材の確かさが、今なお高い評価を受ける理由です。現代では、コレクションを収納したり、カフェや雑貨店のディスプレイ用としても人気が高く、実用性と美観を兼ね備えたアンティーク家具の代表格となっています。

生活に溶け込む“古い美しさ”

丸椅子、ケビント、ガラスケース――いずれの家具にも共通しているのは、「使うためにつくられた美しさ」です。過去の時代の人々は、実用の中に細やかな工夫と美意識を込めていました。だからこそ、時を経てもなお魅力が色あせないのです。アンティーク家具が今の空間に合うのは、懐かしさと新しさを同時に感じさせるからでしょう。

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